記事一覧
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映画批評
n(えぬ)週遅れの映画評〈5〉映画『ゆるキャン△』──バイクの轍が、星座になる。|すぱんくtheはにー
えっとね、この作品全体を貫いているものが〈ずっとあるもの〉と〈なくなっちゃうもの〉の対比なんですよね。例えば冒頭、高校時代のキャンプのシーンで富士山をバックに花火が上がるじゃないですか。当然、花火っていうのは一瞬だけ美しく輝いて消えていくもので、それに対して富士山っていうのはまぁ、千年単位とかでそこにあるわけですよね。 -
映画批評
n(えぬ)週遅れの映画評〈4〉『はい、泳げません』──再起するための、祝福を。|すぱんくtheはにー
主人公は大学で哲学の教鞭を執っている先生で、たぶん一瞬だけ出てくる授業風景だとフランス思想系の実存主義~構造主義みたいなのをやってんだけど、まぁこれは完全に、あんまり詳しくない人が「哲学」と聞いて思い浮かべるイメージ映像というか、「なんとなく哲学っぽ~い」感じのやつ(ただ哲学者の國分功一郎がちゃんと監修に入ってたりはする)。で、この主人公は幼い頃のトラウマのせいで、ハンパじゃなく「水が怖い」。 -
アニメ批評
脚本家・會川昇とフィクションの戦後〈1〉美しい戦争、美しい物語──『機動戦艦ナデシコ』|ねりま
會川昇は戦後の脚本家である。それは無論、我々が「戦後の人間」であるというのと同じ水準において「戦後の脚本家」である、というのではない。會川昇という脚本家は、物語を語ろうとするとき、しばしば戦後というモチーフを意識的にか無意識的にか導入してしまう──そのような意味で「戦後の脚本家」なのである。 -
アニメ批評
高木さん、あるいは母と子の物語──ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ試論|てらまっと
「ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ」もまた、ラブコメ漫画やアニメにおける「新しい波」を名指そうとする試みだった。さしあたって私が念頭に置いていたのは、たとえば『からかい上手の高木さん』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『イジらないで、長瀞さん』といった主に男性向けのラブコメ漫画だ。連載開始時期にはややばらつきがあるものの、いずれも大きな人気を博し、2010年代末~20年代初頭には相次いでテレビアニメ化されている。 -
映画批評
n(えぬ)週遅れの映画評〈3〉『犬王』──どんな呪いにも、続きがある。|すぱんくtheはにー
もともと湯浅政明監督の作品が好きなんです、特に『ピンポン』と『DEVILMAN crybaby』が。どっちも激しいアクションシーンで身体が歪むじゃない、『ピンポン』だったら対ドラゴン戦でスマッシュした瞬間に「ぐぅん」って腕が不自然なほど伸びる -
映画批評
傷物達を抱きしめて──映画『傷物語』とアニメーションの政治性|あにもに
2016年に全3部作として劇場公開された映画『傷物語』は、アニメーションについてのアニメーションである。あるいはより厳密に言うならば、『傷物語』は、アニメーションが含有するある種の政治性を浮かび上がらせる契機を内部に有している、自己言及的なアニメーションである。 -
映画批評
n(えぬ)週遅れの映画評〈2〉『シン・ウルトラマン』──ふたつの心が、共にある。|すぱんくtheはにー
もうね、エンディングに到達したときにはぽろっぽろ泣いてて、水分を吸ったマスクが張り付いて酸欠起こしそうになりながら思ったんですよね、「これ、あんまりだな……」って。 -
アニメ批評
どんでん返しのヘテロトピア──『じょしらく』と震災後の日常|てらまっと
『魔法少女まどか☆マギカ』が大ヒットした2011年とくらべると、翌2012年は『おおかみこどもの雨と雪』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』といった劇場アニメが大きな興行的成功を収める一方で、テレビアニメにはこれといった話題作が見あたらなかったようにも思える。にもかかわらず、ここで『じょしらく』を取り上げるのは、マリーさん(蕪羅亭魔梨威)が可愛いとかキグちゃん(波浪浮亭木胡桃)が腹黒いとか、そういう個人的な理由だけではない。 -
書評
静止した闇の中で──『闇の自己啓発』書評|倉津拓也
『闇の自己啓発』は商業的に大きな成功を収めた。その要因の一つとしては、現代の日本における“売れる哲学”の潮流と共鳴していたことが挙げられる。 -
映画批評
n(えぬ)週遅れの映画評〈1〉『バブル』──跳ぶために、壊すべきもの。|すぱんくtheはにー
作品の中心となるアクションシーンが「パルクール」(街の中の壁や手すりなどを跳び越えたり乗り移ったりして移動するスポーツ)なんですけど、これがねぇ、いまいちパッとしないんですよ。 -
座談会
【対談】震災後の遠景──アニメから見た2012年の風景|志津A × てらまっと
東日本大震災の起きた2011年には注目すべきアニメ作品がいくつもあったように思います。『魔法少女☆まどかマギカ』がその中でも大きく話題になった作品だったわけですが、他にも注目作として、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『輪るピングドラム』『日常』などといった作品がありました。そして、2011年末には『映画けいおん!』が公開されたわけで、この作品は、『まどマギ』がそうであったのと同様、まさにひとつの時代の節目を印づけた作品だったように思います。